オーガニックの現場から
地平線のかなたまで続くテキサスのオーガニックコットンほ場。大型の機械を使うような農場はあまりなく、人の手が中心になる。 photo by Mutsumi Sakuyoshi

特集:オーガニックの現場から ~オーガニック認証の専門家に聞く~

第一回 オーガニック認証と検査

2015.06.23

オーガニックであることを認証されたコットンだけが、オーガニックコットンと表示することができます。なぜなら、出来上がった製品を調べても、一般綿と オーガニック綿の違いは判別できないため、一般綿でもオーガニックと偽って販売することが可能になってしまいますし、オーガニックであることの基準が曖昧では、消費者の信用を得ることはできません。

厳しい制約が多いオーガニックの世界について、私、ハーベストプラス店長の高橋が、認証の専門家である作吉むつ美さんにお話を伺いました。

作吉さんは、国内のオーガニック基準の立ち上げにも関わってこられたオーガニック検査員。また、当店の7年来のお客様でもあり、モデルもしてくださっていいます。
当店サイトの随所で発見できると思いますので、ぜひ探してみてくださいね!
インタビュー当日も、当店のトップスを素敵に着こなして来てくださいました。

作吉むつ美さん作吉むつ美さん

有機JAS検査員・トレーナー
一般社団法人 日本オーガニック検査員協会 代表理事
NPO法人 日本オーガニックコットン協会 理事

---いつも国内外を飛び回っていらっしゃいますが、どんなお仕事を?

「メインは食品(農産物・加工食品)のオーガニック検査です。
コットンの検査はあまりやっていないけれど、活動には係わっています。
あ、フェアトレード・ラベル・ジャパンのコットン検査はしましたね。
先頃 日本オーガニックコットン協会(JOCA)の理事を仰せつかりましたが、今はオーガニックコットン販売士の企画運営、講習講師などで、ほとんど企画屋になってます。」

 
そもそもオーガニックコットンの認証って?

オーガニックコットン関連企業は 「さながらお役所」のように煩雑な手続きに追われます。それほど厳しい基準にのっとって作られた製品なのだと、安心して買っていただける証ともなる オーガニック認証。
しかし一般にはなかなか見えにくい認証について、わかりやすくぶっちゃけトークしていただきました。どうしても聞きなれない固有名詞など混じってしまいますが、都度注釈をつけますのでご容赦を。

農産物としてのオーガニック認証は必須

--- ひとくちにオーガニックコットンの認証といっても、横文字・略称だらけでいろいろあってわかりにくいのですが、簡単に教えてください。

「まず、有機農産物としての認証があってこそのオーガニックコットンですが、現在コットン自体は、日本の有機農産物の認証制度である有機JAS(*1)の対象外なんです。」

---オーガニックコットンと名乗るには、海外で認証されたものを輸入するか、日本で生産しても海外の認証機関に認証を頼むしかないということですか?

「そうですね。基本的に海外では、生産国に日本の有機JASのような基準があり、原綿の認証をしています。

たとえばインドの場合、オーガニックコットン生産量が全世界生産量の約74%を占めるているんですが(2012~2013年)、基本はインドの有機農業基準(*2)で、原綿の認証を行っています。
でもインドの生産者は、もともとEUや米国など海外への輸出を前提にしているから、輸出先の基準を使うこともあります。

他の国に関しては、WTO(世界貿易機関)に加盟している国であれば、 CODEX (*3)という世界的に合意のオーガニック基準があるので 、自国の法律にあてはめて作ります。細かい違いはあるにせよ、原則はほぼ一緒。」

---なるほど。基本は一緒でも、各国に有機農産物基準が存在していて、またそれを認証する機関が世界中にあるわけですね。

製造加工段階をチェックする認証も

「原綿はこういったスタンダードで動くわけなんだけれど、 テキスタイルについては基準がなかったわけですね、ずっと。
オーガニックコットンを使っている製品はかなり昔から あったけれども、 生産の時に農薬を使わないでがんばっても、加工でたくさん(化学薬品等を)使うじゃないですか。 それじゃ意味がないんで、ちゃんとそこを整理しましょうということで「オーガニック・テキスタイルの世界基準 GOTS」が作られたわけです。
もちろんテキスタイルだけの認証はできません、原綿でオーガニック認証を取っていることが前提です。」

*1 有機JAS 有機食品の検査認証制度
  • 『世界的には綿花の有機栽培に対して「オーガニックコットン」の表示基準を有する機関もあるが、日本ではJAS法の対象外である。即ち有機JASマークは貼れないが、有機という表示は可能である。』
    農林水産省 有機農産物検査認証制度ハンドブック(改訂第5版) 平成24年6月
*2 インド有機農業基準(NPOP: The National Programme for Organic Production
*3 コーデックス国際食品規格(CODEX)農林水産省日本語版ページはこちら
オーガニック・テキスタイルの世界基準 GOTS

---1989年にオーガニックコットンが提唱されてから四半世紀、製品の最終工程まで環境負荷をかけない持続的な製品づくりへの新たなステージに来たと。

「はい。それで2002年に、これまでバラバラだったオーガニックテキスタイルに関する認証基準を統一しようと、 ドイツ、イギリス、アメリカ、そして日本からはJOCA(日本オーガニックコットン協会 以下:JOCA)が策定に参加したのね。

もともとJOCAは自らの製造加工の基準を作って認証もやってたんだけど、GOTSを持つことになったので、今までのJOCA認証はファミリータグ(会員タグ)に切り替えて、認証業務自体はGOTSに引渡すことになったわけ。 基準を持っている機関が、自分で認証をしてはいけないというルールがあるので。」

---”公正な第三者機関による認証”というルールですねっ。(得意気)

「そう。まだGOTSは民間なんだけど、 すでにアメリカでは、GOTSのものはオーガニックとして売っていいよ、と発表されてます。」

GOTS JOCA タグ

「そして、JOCAのGOTS参加の過渡期に、認証の専門家という形でかかわったのが、 私とJOCAとの出会いで、それからズルズルとオーガニックコットンの世界へ・・・ 。
それからハーベスト・プラスに出会って、ますますオーガニックコットン製品が増えたのよ。」

--- またまた、よいしょしてくださってありがとうございます。 光栄です!

「本当だってば。スーツ系以外のオーガニックコットン製品はほとんどハーベスト・プラスだし。Afaさんの洋服との出会いもあって、なおさらのめりこんでしまったというか。」

GOTS(Global Organic Textile Standard)
<認証範囲>
  • すでに認証された原料とそのトレーサビリティー
  • ケミカルの使用について禁止と制限の規定
  • 分離と識別
  • 環境管理
  • 残留物の限界
  • 社会的規範
<GOTS国際作業グループ>
ドイツ: International Association Natural Textile Industry
イギリス: Soil Association
米国: Organic Trade Association
日本: JOCA(日本オーガニックコットン協会)

GOTSについての詳細は JOCAのページ でご覧いただけます。
日本におけるオーガニックコットンの定義
原綿がオーガニック認証を取得していれば、オーガニックコットン製品として販売することはできます。
しかしハーベスト・プラスの取引先メーカー様の大半は、オーガニック認証を取得した原綿の使用を前提とした上で、GOTSを取得したり、日本オーガニックコットン協会(JOCA)、日本オーガニックコットン流通機構(NOC)など厳しい基準を持つ民間団体に参加するなどして、自社製品が製品化に至るまで確かなオーガニックコットン製品であることを約束しています。

---国内生産量も少なく、大半が輸入ということもあり、農産物としては国内でのオーガニックコットンの立場は弱そうですが、昨今のオーガニックコットン製品の伸びについては国も無視できなくなったのでは?

「一応何年か前に、中小機構が予算をとってオーガニックコットン表示のガイドライン調査報告書を出したんだけど(*4)、 業界の人でさえあまり読まれていないようで、拘束力もなくフェイドアウト?しちゃいました。
あれが出た段階で、”まあいいね”で終わってしまったみたいですね。
調査から含めて3ケ年くらいのプロジェクトだったと思うんだけど、それで収まってしまうくらい 業界の広がりがなかったというのもあるんだろうね、 ものすごく業界が広がれば、法制化という話まで行ったんだろうけど。

それに、テキスタイルに関しては、原綿までは農水省、製造流通になると経産省で管轄が違うから、 基本的には交流がないじゃない、縦割りで。」

---報告書の中にはご丁寧に「経産省への提言~ガイドライン最終案」とあるにもかかわらず、結局、経産は動かなかったんでしょうか。

「農水と経産省の間で、いろいろやりとりはしていているんですよ。
JAS法も5年に1回の見直しがあって、今回も農水側は、有機JASに原綿まで入れるかどうかの検討はしています。 経産省のほうは、基本これ以上はもういいっていう感じかも。

食品も法制化までには何年もかかったし。最初ガイドラインでごまかそうと思ったけど、1997年くらいにCODEXができて、日本もあわせなけりゃ、、になっちゃったから、作ったわけですよ、有機JASを。 2000年施行だったかな。」

---あらら、有機JASハンドブックの初版は、作吉さんも執筆担当されたんですか! そんな方を私ったらアゴで使って。。。いやはや、あらためてご本人の言葉で聞くと、すごい説得力です。

オーガニック検査のこと

---ところで、ご本業のオーガニック検査員とは、どのようなお仕事ですか?

「私の場合、海外では ecocert(仏)やOCIA(米国)などの認証機関、国内にもたくさんの有機登録認定機関がありますが、 近いところでは熱海の自然農法国際研究開発センターなどからの依頼で検査をします。

たとえば国内の食品だったら有機JASが基準になりますが、 生産者が認証を受けたいと申請をするところから始まります。 その申請内容があっているかを現場に行って確認するのが検査員の仕事。

農産物だったら書類でこんな肥料を使っているだとか、 種や苗はこんなものを使っているとか 管理をどういう風にしているとかということを 申請の通りか現物を確認したり、畑を確認したり、伝票とか作業記録を確認したり 当事者面接しながらなんですが、そういうことが要求されています。

現場に確認に行くのは検査員だけなので、依頼された事務所に検査結果をレポートにまとめて、 内容評価をフィードバックします。」

有機検査員のしごと

---オーガニックでは、3年間 有害な農薬や肥料を使わないという基準があるけれど、どの段階で申請するんですか?

「認証機関によって多少違うんだけど、 「これから始めます」という所からしか受け付けない所もあれば、 「3年やってきました」という履歴の証明ができれば、それを評価してOKというところもある。
でもどんな受付をしようと、3年前まで、さかのぼっての確認は必ずやるから。 絶対それは確かだから。 約3年の履歴を確認して、そこがずっと有機だからこそ初めて有機になるので、 そこの履歴は全部確認します。」

---申請してダメだった事例もあると思いますが、主な原因は?

「使っていた肥料が有機では認められないものだった、という理由が多いと思います。 データをとったことはないですが。
でも、申請する前の問い合わせ段階でだいたいは見当がつくので、申請しても ダメなケースは少ないだろうと思います。
改善に改善を重ねて、認定になるとい うパターンはけっこう多いでしょう。
ただ、使う資材(肥料や薬剤)がダメだと どうにもならないので、次の「転換」時期約3年、またがんばれ!みたいな ことになるわけですね。」

---素朴な疑問ですが、たとえば、昔から何も手をかけずに裏山で自然に育った「みかん」でも、 有機JASが取得できるものですか?

「「放任」と「自然」も違うし、定義づけはじめたらややこしいけど、 自然にはえているといっても、下草をかったり、枝をはらったり、場合によっては肥料もやったり してるでしょうね。 化学肥料を使わない、有機肥料を使わない、農薬は使わないということであれば、 たぶん、だいたいは認証をとれるような栽培方法だと思うのですが、 肥料の内容だったり、種苗だったりがどうなのかで、場合によっては取得できないという可能性もあります。」

---話がそれますが、オーガニックを目指して転換中のコットンを使ったプレオーガニック製品も出回っていますが、これについてはどうですか?

「日本では、テキスタイルのオーガニック表示にちゃんとした法規制がないから、プレオーガニックとして使われることもあるけど、 あれは某商社の戦略です。
食品にはそんなのないからね。
ただ食品の有機JASでも、1年たったところで「転換期間中」というのがある。 でも、これがあるのは日本くらいで、アメリカとかEUではそれやってない。

転換中とかプレとか、3年もオーガニック的にやっていて、なんのプレミアムも ないと生産者もしんどいから、それを応援する仕組みとしてはありかと。
だけど、転換やプレを使いまわして、結局はオーガニックをやらない、ということもあるので、難しいところもあるのが実際。」

---ありがとうございました。またさらに掘り下げて、第2弾、第3弾もお願いします!

「え?みんな興味あるのかなー、読んでくれるかしら?」

---読んでいただけるように、がんばります!!

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